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木田GM補佐が見た、ファイターズが目指す「育成」とは

いい選手を探すのがスカウトの仕事。

チームに必要かを見極めるのがGMの仕事。

日本でもアメリカでもGMの役割はさまざまです。

基本は“チームをつくる、編成する”ことですが、たとえば、お金の面まで見る人もいれば、お金はノータッチという人もいる。

ファイターズは、GMの吉村がチーム統括本部長も兼ねているので、まさに“チームの現場すべて”を担当していると言えます。

ですから、どこまでがGMの領域で、どこからが本部長の領域か明確に分けられないというのが現状かもしれませんね。

 

私のメインとなる仕事は、ドラフトに向けてアマチュア選手を見にいくこと。

また、現場にGMがいないときは、チームをフォローする役目もあります。

ホームゲームは約8割、ビジターゲームは約2割チームに帯同し、現場の状況を監督や選手にヒアリングします。

もちろん、なにか問題があればGMに相談する。

それらの役目を、遠藤良平氏と分担しています。

その合間に、アマチュアを視察する感じですね。

ファイターズの方針として、スカウトはチームの補強ポイントや弱点など関係なく“いい選手を探すこと”を仕事にしています。

一方、我々はスカウトが推薦する選手を、補強ポイントなどを加味して獲得を検討するのが役目。

最終的には、我々に大渕隆や山田正雄なども加わり、ドラフトで指名する選手を決めることになります。

 

メジャーリーグでプレーしたとき、日本の野球界を考えると、選手はメジャーでも通用するレベルになってきたけど、環境など他の面ではまだまだ届いていない部分がたくさんあると感じていて、それを変えたくなったんです。

ならば指導者などよりも連盟や球団ではないかと。

カッコつけて言えば、問題点を改善し未来のプロ野球選手たちが「楽しい」と感じてくれれば、プロ野球はますます栄えるだろうし、日本で「プロ野球選手になりたい」という子どもも増えると思っていました。

ドジャースにいた時に、ダン・エバンスという方がGMの時に、マイナーの選手を集めて話をした場面があったんです。

君たちが真剣に野球に取り組み、結果を出していい選手になったら、わたしがちゃんとメジャーに引き上げる。ただ、メジャーの選手枠は25人しかない。数に限りがあるんだ。もし枠がいっぱいのときは、他の球団でプレーできる働き場を探すから心配するな」と。

日本ではあまりないシーンでしたね。

 

ドジャースの3A時代、リリーフだったのにチーム事情で先発をしていたときがあったのですが、若手の先発投手を2Aから上げるので、再びリリーフに配置変更になったことがありました。

僕自身は問題なかったのですが、コーチが「木田には100%納得してもらって気持ち良くプレーしてほしいから」と球団事務所の日本語ができるスタッフに電話かけはじめたんです。

「いまから言うことを、すべて訳して木田に伝えてくれ」って。

 

日本にもこういった意識を持った球団関係者はいますけど、アメリカの方が割合は多かった気がします。

昔からの流れで、「他の選手を蹴落としてでも一軍に上がらなければならない」みたいな空気がありますよね。

「それって、違うのかもな……」と野球観が変わった気がしました。

逆の意味でのエピソードですが、僕がオリックスにいたときフレーザーという外国人投手がいました。

彼が日本で3年目のシーズンに、ウインという外国人投手が入団してきたんです。

僕はフレーザーに向かって、「ライバルがきたな」と話したんですよ。

そしたら彼は、外国人枠争いがあるにも関わらず「ライバルではない。彼はチームメイトだ。」と言ったんです。

本音はわからないですが、少なくともその場面ではきっぱりとそう言った。

「かっこいいなあ」と感じたのですが、それを思い出しました。

吉井理人も「メジャーの方が浪花節だ」と話していますよ。

「チームの優勝が一番」という意識が強くなれば、チームが強くなりますよね。

 

球団としてもいろいろな取り組みをしています。

最初に選手に教えているのは、「自分で考えろ」ということ。

自分で考えて行動できる選手を理想として目指しています。

こうした球団の方針は、選手の成長スピードにも影響しているかもしれません。

たとえ二軍でも、試合に出続けるなかで結果を残さないと一軍へは行けない。

 

若手選手育成の成功要因のひとつはスカウティング能力の高さですね。

とにかく、能力の高い選手が入ってきてくれます。

もうひとつは、レギュラー選手が、他球団へと移籍すること。

そういう理由もあって、ファイターズは若い選手を使わざるを得ないんです。

僕らは、選手の可能性を探るのが仕事ですから「体力はないけど技術はすごい!」という選手を獲得することもあれば、その逆だってある。

あるいはバランスのいい選手を獲るときもあれば、一芸に秀でた選手を獲る場合もありますし。

チームはいろいろな選手がいないと戦えない、という考え方です。

「いまのチームにはここが足りない」というよりも「この選手は、将来、こういうポイントを助けてくれるのではないか」という視点を重視しています。

言い方を変えれば、将来、チームを勝たせてくれる選手か否か、です。

いろいろな形でチームに貢献できる選手が揃っていた方がもちろんいい。

我々は、チームがシーズンを戦ううえで、監督にどれだけの選択肢をもってもらえるかが仕事ですから。

 

若手選手は、まずファームでどんどん試合に出ているんですよ。

他球団の若い選手は、育成選手もいるしファームでも試合の出方などは徐々に学んでいくように見えます。

その点、ファイターズは最初から「何打席立たせる」という明確な数字を決めて試合に出します。

選手たちはその環境、すなわち試合に出続けるなかで結果を出し、「使ってみたい」と思わせられないと一軍へ行けない。

だから早い段階で、“1年間戦う能力”は身に付けていくことになるのです。

 

 

選手教育は一生懸命やっていますが、やはり個人差はありましたかね。

ただ、ファームの試合にどんどん出される分、試合に対する意識は高いという印象を持っていました。

他球団では、ファームでも試合に出られない選手がけっこういます。

彼らはまず「練習でやったことを、どう試合で出すか」ということを考えるでしょう。

しかし、試合に出続けるファイターズの若手選手は、「前の試合ではこうだったから、次の試合ではこうしよう」と、試合ありきでプレーすることになりますから。

吉村GMがいつも僕らに言うのは、「既成概念を持つな」ということ。

だから、ファイターズが育成選手をこの先も絶対に獲得しない、三軍もつくらないということはありません。

大事なのは、三軍をつくってどれだけの意味があるか、という点。

2016年のファイターズは支配下登録選手枠が5人余っている65人の選手で戦い日本一になった。

この状況で、わざわざ育成選手を獲る必要はないでしょう。

また、たとえば三軍から一軍選手を育成するのに、コストはどれくらいかかるのかも考えなければいけません。

吉村GMから「チームのためだけではなく、トレードは、選手のため、球界のためになるのであれば検討する余地がある」と言われているんですよ。

球団間で足を引っ張り合うような意識はありません。

チーム内でもそうです。

僕も若い頃は、「あいつが打たれれば、オレが投げられるぞ」と思ったことがあるけど、ファイターズの選手には、少なくとも表面上はそれを言ってほしくない。

チームメイトが打たれて喜んでいるような選手はダメですから。

いままでの日本球界では、「他人を蹴落としてでも一軍に上がる!」のが良いとされてきた部分もありますが、今後はそういった考えを変えていくべきでしょう。

たとえば一般の会社でも、自分の失敗を喜ぶような同僚がいたら嫌じゃないですか。

基本となるのは、それと同じだと思います。

よく世間では、「プロ野球選手の前に一社会人たれ」と言われますが、ファイターズは違います。

「ファイターズが理想としている選手になれば社会でも通じる」という形を目指すべきではないかと。

すぐに結果が出にくいし、見えにくい部分ですが、そこを大事にしなければならない。

こういった教育を通じ、「ファイターズの優勝が一番だ」と思える選手が増えていけば、チームはきっと強くなるはずです。